「大人になったら、わたしは何の仕事をしようかなあ…。」そんな風に、将来の目標がなんとなく決まらないという方も、多いのではないかと思います。
それは、しっかり自分の心を見つめる時間を、取る機会がなかったからかもしれません。みなさんは、「立志式」という儀式を、ご存じですか?
この儀式は、大人になる前の中学生にはとっても大切なタイミングなのですが、開催は地域によるので、「聞いたことがない!」という方も多いのです。
ここでは、「立志式」について、ご紹介していきたいと思います!
目次
「立志式」は何する?大人になる自覚を持つための儀式?
古くからから続く歴史のある行事で、現代でも、中学校の年中行事として取り入れている地域が多いです。
自分の決意や目標を発表・手紙を読む
儀式では基本的に、生徒が自分の決意や目標を発表する、親から&親への手紙を読む、先生・在校生・家族からのメッセージを載せた冊子を発行するなどの行事を行います。
立志式の手紙の例文については別記事でも紹介しているのでよかったらあわせてご覧ください。
ボランティアや講演会なども?
学校によっては、ボランティア活動、植樹、登山、ウォーキング、マラソン、有名人を呼んで講演会をするなど、地域によってさまざまな取り組みがあるようです。
現在では廃れてしまっている学校も?
地域全体で子供の成長を見守る大切な風習ですが、現代では、立春は進級進学の大切な時期ということもあって、徐々にすたれてしまっているという一面もあります。
出来るだけ継続して欲しい儀式ですよね!
「立志式」の意味は?奈良時代の元服が由来か?
奈良時代の元服が由来
「立志式」は、奈良時代からはじまる「元服(げんぷく)」に由来しています。
元服とは、数えで15歳(現代では14歳)になる子供が行った、大人になる儀式、いわゆる成人式のようなものでした。
「元」は冠をかぶる、「服」は大人の服を着用することをさし、髪形や名前を変える風習などがあり、女子も「髪上げ」や「まゆばらい(眉を剃る)」などを行いました。
後に武家、町人、百姓にもこの風習は広まり定着し、武家では冠ではなく「鳥帽子(えぼし)」を使い、農家では、立志式と同時に若者組(成年男子の地域集団)に加入するなどが見られました。
そのため、「立春式」「元服式」などの別名で呼ばれることもありますよ。
「立志式」はなぜ14歳?なぜ中学2年生?
14歳といえば、大人と子供のちょうど中間、進路を真剣に考え始める不安定なタイミングです。
昔は14歳は大人の仲間入りだった?
現代の感覚では、「14歳で大人の仲間入り」と考えると、少し早いような気がするかもしれませんね。そもそも元服のあった時代は、江戸時代でも平均寿命が30代とも言われる短命な時代です。
労働力も必要なので、数えで15歳という若い年齢でも、成人とする必要があったのでしょう。
現代の14歳、15歳あたりの時期は不安定さもありますが、一度、自分の心を深く見つめ、目標を人前で発表すれば、将来に立ち向かう心構えができますし、自分の性格の方向性などにも気づけるでしょう。
ちなみに織田信長は13歳、徳川家康は14歳で元服をしたそうです。1973年には、「20歳で成人」と制定されたことで、立志式よりも成人式の方に目が行くようになってしまったようですよ。
「立志式」はいつ?2024年はいつ?
2024年の立志式は?
2024年の立志式は基本的に2024年の立春の日になりますが、各学校の都合上、また土日祝日などの都合上、付近の日程になります。
詳細は学校によって違うので問い合わせてみましょう!
ちなみに2024年の立春の日は別記事でも紹介しています。
「立志式」を実施する地域は?栃木や福井・熊本は?
しかし、全国のある調査で見ると、栃木県、愛媛県、宮崎県、熊本県、石川県などの県内割合が、とても高くなっています。
立志式の実施割合が高い都道府県
- 栃木県
- 愛媛県
- 宮崎県
- 熊本県
- 石川県
その他にも全国的に実施していますが、上記の県が特に立志式を実施する中学校の割合が高いようです。
栃木県ではほとんどの中学校で立志式を実施
各地域の催しものも工夫されており、40年以上も立志式の歴史が続き、現在でも全体の97%の中学校が立志式を行うという栃木県では、地元のプロレス団体「栃木プロレス」が、生のプロレスを披露することで、コロナ禍でも生きぬく勇気や、いじめ撲滅を啓発するという、バラエティに富んだ取り組みが行われています。
熊本県では30歳の立志式である三益式がある
珍しいところでは、熊本県には30歳の立志式と言われる「三益式(みますしき)」が存在し、地元に残った同世代が集まり、故郷愛や地域貢献につとめるイベントとして開催されています。
立志式を行う県では、地域民の結束も強くなるのかもしれません。
福井県では「啓発録」の五訓を重視
また、上位には入らなかったものの、幕末に活躍した橋本左内(さない)の出身地、福井県では、左内が立志式の時に記した「啓発録」を取り上げる学校が多くあります。啓発録の五訓には、
1稚心を去る(子供っぽい考えをしない)
2気を振るう(強く決意する)
3志を立てる(ゆるぎない目標を立てる)
4学に勤める(学問にはげむ)
5交友をえらぶ(向上できる友を選ぶ)
などが記されており、これは左内の生きる上での心構えとなったと言われています。
後に左内は医学校へ進み、幕末の適塾で緒方洪庵(おがたこうあん)のもと蘭学を学び、世界に目を向け奔走したとされています。
中学2年生でここまで考えるとは、全く頭の下がる思いですね。
まとめ
いかがでしたか?「立志式」がどんな儀式か、おわかりいただけましたか?
古くから伝わる元服をもとにした通過儀礼で、現代でも多くの地域で、さまざまな形で残されているということがわかりました。立志式は、自分を内省し、人生の目標への覚悟を決めるという儀式です。
中学生という揺れ動く時期に、気持ち明らかにし、皆にわかってもらうという経験は、その後の人生にとって、とても大きな財産となるでしょう。思いを言葉にするという事には、大きな力があります。「自分の学校には、立志式がなかった!」という人は、いますぐにでも自分の心の中を見つめて、目標を誰かに宣言してみましょう!