お盆のお供え物の一つに「素麺(そうめん)」があります。お団子やおはぎなどと同様、お供え物として仏壇に供えたり、お膳としてお供えする行事食の一つでもあります。
では、なぜお盆にそうめんをお供えするようになったのでしょうか。
お盆にお供えするものにはそれぞれに意味が込められており、お供えされるようになったのには由来があります。
今回は、お盆にそうめんをお供えする意味や由来について詳しくみていきましょう。
目次
そうめんをお供えする・食べる意味
そうめんに込める意味は諸説あり、これといって必ずしも確実な説が存在するわけではありませんが、様々な文献にお盆とそうめんの関係性の記述があります。
その記述は地域によって異なり、地域によって様々なお盆とそうめんの関係性が存在します。それらの諸説をまとめると、主に次の4つと言われています。
- 喜びを細く長くという縁起をかつぐ意味
- 仏様が帰るときに荷物を背負うために括る紐の意味
- 仏様が帰るときに使う手綱の意味
- 疫病の予防を願う意味
①「喜びを細く長く」という縁起をかつぐ意味
そうめんが細長い糸のような形をしていることから、「幸せや喜びが細く長く続く」という意味を込めて縁起をかついぐ意味でお供えに用いられるようになったという説があります。
おせち料理の一つ一つに縁起をかつぐ意味があるように、お盆のお供え物のそうめんにもそのような意味があるそうです。
②仏様が帰るときに荷物を背負うために括る「紐」の意味
ご先祖の魂はお盆の期間中に厳正に帰ってくると、様々な料理やお土産を振舞われます。それを持ち帰るためには背中にたくさん荷物を背負って帰らなければならないため、その荷物を括る紐の役割をするとのことです。
民俗資料選集にも、「ソウメンは仏様がお帰りになるとき、お土産の品々を背負う紐になる」という記述があります。
③仏様が帰るときに使う「手綱」の意味
ご先祖はお盆の最終日、送り火の煙にのってあの世へ帰っていきます。そのときに精霊馬にのって帰っていくとされるのですが、そうめんんがそのときの手綱となると言われています。
④「疫病の予防」を願う意味
昔から、そうめんを食べれば熱病にかからないという説が信じられてきました。
平安時代、宮中の七夕行事でも「熱病除け」としてそうめんがお供えされていました。その習慣から、お盆のお供え物にも同様に「疫病の予防」の願いを込めて取り入れられたという説があります。
季節の食べ物でもあり、暑い夏に食べることでエネルギーとなると考えられてきたのでしょう。
地域によっては、そうめんの代わりにうどんをお供えする地域もあります。
そうめんをお供えする由来
そうめんをお供えするようになった由来は大きく分けて2つの説があります。
麦の収穫祭
麺類をお供えものに使うようになったのは、お盆の時期の「麦の収穫祭」をかねているという文献の記述もあります。
他にもなすやキュウリなども季節の野菜として使用されていることを考えても、季節のものがそのままご先祖様へのお供えものとなっているようです。
七夕行事
平安時代、宮中の七夕の行事でそうめんがお供物とされてきた歴史があります。これもそうめんが季節のものだからという理由も関係しているのでしょう。
七夕にそうめんが供えられる風習がお盆にも取り入れられ、盆棚のお供え物として引き継がれたと考えられています。
また、七夕は「針仕事の上達」を願う日本の伝統的なお祭りでもありました。そのため、そうめんが糸に見立てられ、針仕事上達の縁起物としてお供えされていました。その習慣が、お盆の盆棚にも取り入れられたという説もあります。
お盆だけでなく、様々な伝統行事や言い伝えが重なり合って、今日のお盆のお供え物となったのですね。
そうめんのお供えの仕方
では、お盆でそうめんはどのようにお供えするのでしょうか。盆棚飾りとして飾る方法と、行事食として飾る方法の二つがあります。
盆棚飾りとして
茹でずにまとまったまま、盆棚にお供えしましょう。
ゴザがある場合はそのまま、ない場合はお皿にのせて、束をに重ねてお供えします。
行事食として
行事食は、仏様が食べるためのお供えですので、茹でてお膳などと一緒にお供えします。この時は麺つゆも一緒にお供えしましょう。
行事食として食べるのは、一般的にお盆3日目の8月15日が通例とされています。
行事食は、下記のように食べるものが日付ごとに決まっています。
- 8月13日:お団子(迎え団子)
- 8月14日:おはぎ
- 8月15日:そうめん
- 8月16日:お団子(送り団子)
地域や宗派などによっても異なりますが、一般的にこの日にちと順番であると覚えておくと良いでしょう。
お供え物は、上記のもの以外にお花・落雁などの盆菓子・野菜・果物・お膳・飲み物などがあります。
まとめ
お盆にそうめんをお供えする意味は、縁担ぎや仏様のアイテムなど様々な意味が込められています。
昔から大切にされてきたそのような習慣の意味をしっかり理解して、あらためてお盆に気持ちをこめてお供えできるようになれたら素敵ですね。