5月は五月(さつき)と言いますよね。でもふと、壁にかかったカレンダーを見ると「皐月」の文字が。
「ん?なんだ?なんて読むんだ?」と思わず首をかしげてしまいます。日本の1年、12ヶ月には、古くからその月を表す言葉、和風月名(わふうげつめい)というものがあります。
その内、5月を表す言葉が皐月というわけです。日本に古くからある言葉は、その季節の特徴をよく表しているものが多いです。
では、皐月の季節は、どのような季節なのか、調べてみましょう。
目次
皐月は何月?読み方は?旧暦の場合はいつからいつまで?
「皐」という文字はあまり使いませんが、これ一文字で「さつき」と読むこともでき、沢・水際などの意味を持つ言葉です。
先ほど「五月晴れ(さつきばれ)」という言葉が出てきましたが、五月も「さつき」と読みますよね。実は五月(さつき)のほうが古くから日本からありました。その後、中国から皐(さつき)という字が入り、皐月となったと言われています。
旧暦の皐月はいつからいつまで?
現在の日本は新暦を採用しています。ですが皐月という言葉は、明治5年以前の旧暦の頃にできたものなので、実際は1ヶ月ほど時期がずれ、5月下旬から7月上旬のことを指していたと言われています。
私たちは5月と聞くと、ゴールデンウィークの春真っただ中を思い浮かべますが、本来は少し後の、梅雨や真夏の手前の時期だったのですね。
皐月の意味由来・語源は?
和風月名は、季節の特徴や、農耕から由来していることが多いものです。
当時、皐月の季節は、主に田植えのシーズン、みんな一斉に苗を植え始めたことでしょう。そこから「早苗月(さなえづき)」という言葉が生まれ、さつきに変わったという説があります。
苗は田んぼに植える前に、ある程度、別の苗床で育てておきます。その少し育った苗のことを早苗というのです。
また、「皐」という漢字には、「田んぼの神様に捧げる稲」のことを指すとも言われているため、皐月となったとも言われています。
皐月という言葉から、この季節には、人々は神様に豊作を願いながら、田植えに精を出していたことがうかがえますね。
皐月の別名は?他の呼び方もある?
やはりこの時期の言葉、呼び方は、田植えにまつわるものが多いようです。
早苗月(さなえづき)
皐月の元となったと言われている「早苗月(さなえづき)」。5月をこの名前で呼ぶことがあります。
田草月(たぐさづき)
「田草月(たぐさづき)」という言葉は、田植えの最中に生えてきてしまう田草を取るのが重要な作業であったことを表しています。
月不見月(つきふみづき)
皐月の季節は、旧暦であれば主に6月前後。するともちろん「月不見月(つきふみづき)」というような言葉も生まれました。
6月といえば梅雨ですね。雨や曇りが続き、月が長い間見えない時もあったのでしょう。
梅月(うめづき)・梅の色月(うめのいろつき)
梅雨は梅を漬ける季節です。
「梅月(うめづき)」「梅の色月(うめのいろつき)」という素敵な言葉もあります。
梅の実が徐々に赤みがかっていくのを、人々が楽しみに見ていたのを想像できますよね。
皐月を季語に使った俳句はどんなものがある?
やはり季節柄か、雨が降っている景色が多いのが特徴です。
小田原で 合羽買たり 皐月雨
与謝蕪村の俳句です。季語は皐月雨になります。出先の小田原で雨に会い、カッパを買ったという、現代人でも共感できる句ですよね。
立ぬれの 牛静かなり 皐月雨
こちらも雨をモチーフにしており、季語は皐月雨です。三宅嘯山(しょうざん)の句になります。
農耕に使っている牛が、雨の中で身じろぎもせずに立っているというような風景です。そんな牛を見て、あなたなら何を思いますか?
皐月富士 のぞむ庵の 炉塞がず
皐月の俳句には、富士を詠んでいるものも多いです。外に建つ陶芸用の庵から見える富士山が美しいので、残しておこうかなという句です。
雨が多い季節、その中に垣間見える富士山がより立派に見えたのでしょう。今の私達でも共感できる句が、とても多いですよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?皐月はさわやかな5月の印象がありましたが、実際は梅雨や農耕の始まりの時期で、昔の人々は大変そうな季節のことでした。
きっと朝から晩まで田植えにかかりきりで、今日も雨かと話し合っていたのでしょう。現代の私達には、田植えのことはわからないかもしれません。
ですが、長く降りつづく梅雨の雨に感じたり体験していることは、今も昔もあまりかわらないんだなと、少し楽しく思いませんでしたか?昔からある日本の言葉を調べていると、昔の人々の生活を、少し愛おしく感じてしまいます。
ちなみに記事中で紹介したさ「五月晴れ」については別記事「五月晴れの意味由来は?時期はいつからいつまで?言い換え・別名は?季語に使う俳句は?」で紹介していますのでよかったら合わせてご覧ください