長月は和風月名の1つです。日本の1年12ヶ月に、それぞれ名前をつけたものを和風月名(わふうげつめい)と言います。
長月という名前はとてもシンプルな印象ですね。でも和風月名は、その季節ごとの素敵な特徴を盛り込んでつけられている名前ですから、きっとその背景には意外な由来があるはずです。
では、長月について理解を深めてみましょう。
目次
長月は何月?読み方は?旧暦の場合はいつからいつまで?
カレンダー上の9月のことを指しています。
9月というと、秋の気配はあれど、まだ少し暑さも残る、そんな印象があるかもしれません。
ですが本来の長月の時期は、少し違います。現在の私たちの使っているカレンダーは新暦を採用しています。ですが和風月名は、明治5年以前まで使用していた旧暦の時代にできたものです。
旧暦の長月はいつからいつまで?
だいたい9月下旬から11月上旬辺りのことを指しているのです。
そのくらいになるともうかなり気温も下がって、秋が深まってきているという印象ですよね。だとしても、なぜ長い月と書くのか、その疑問だけは残ります。
では、以下で長月の由来について調べてみましょう。
長月の意味由来・語源は?
長月の意味由来・語源にはいくつかの説があります。
有力な説は夜長月が由来?
長月というからには、何かが長いのでしょう。では何が?先ほどふれたとおり、旧暦の9月はかなり秋も深い頃です。
その頃になると、夏を終えた人々は「ずいぶん日が短くなったなあ。」と感じ始める頃ですよね。
つまり、「夜長月(よながづき)」という言葉から、長月となったと言われているのです。
現代でも、秋の夜長と言って、この季節に読書を楽しんだりしていませんか?
長月の意味由来・語源には他にも説がある
また、この時代は稲作が生活にとって重要だったので、稲穂が長くなる月「穂長月(ほながづき)」から派生したという説や、稲刈りの季節ということで「稲刈月(いねかりづき)」が「ねかづき」となり「ながつき」と言われるようになったという説などがあります。
その他にも、この季節は雨が続くことがあり、長雨(ながめ)から派生したなど、諸説あります。
どの言葉も、活動的だった夏が終わり、完全に秋となって全てが落ち着いた静かな風景が想像できる気がしませんか?
長月の別名は?他の呼び方もある?
特にこの季節には、秋の美しい風景を連想させるような言葉が多く、魅力的です。
菊月・菊咲月・菊開月
この季節には菊の花が咲き始めることから「菊月(きくづき)」「菊咲月(きくさきづき)」、「菊開月(きくひらきづき)」など、菊に関する言葉も多いです。
紅葉月(もみじづき)
「紅葉月(もみじづき)」との呼び方もあります。旧暦の9月ごろには、山の紅葉がそれはそれは見事に赤く美しくなることでしょう。
また黄色、緑、赤と、色とりどりに染まった山々を連想させる「彩月(いろどりづき)」も素敵な言葉です。
晩秋(ばんしゅう)・暮秋(ぼしゅう)
また、旧暦では7~9月が秋とされていますので、9月は秋の最後の月ということで、「晩秋(ばんしゅう)」、「暮秋(ぼしゅう)」という言葉も使われました。
どの言葉も、落ち着いた美しい秋の風景が浮かんできますね。
長月を季語に使った俳句はどんなものがある?
星もなし 月は長月 十四日
こちらは秋の月を詠んだ正岡子規の句になります。今夜は星もなく、十四日の名月が良く見えると言う意味の句になります。
この句が詠まれた年は、14日頃満月だったようです。
黒い空にポーンと丸い満月が浮かんでいるのが想像できますね。
長月の 空色袷 きたりけり
美しい秋の空を詠んだ、小林一茶の句です。長月の頃には抜けるような青空になることがありますね。
今日は、そっくりな色の着物を着ていると、嬉しい気持ちになっているのが伝わってきます。
粛まる霜の長月 薪には樗の木
金子兜太(とうた)の句です。
霜が降り始める凍える長月なので、火を焚いて、巻きに樗(センダン)の木を使おうと言う句です。
秋とはいえもうすぐ冬です。夜には霜が降りるほど冷え冷えとして、その炎の熱までじんわり伝わってくるような句ですね。長月は、秋らしい美しさと、本格的な寒さが両立する季節だったようですね。
まとめ
いかがでしたか?長月は、とてもシンプルな印象の名前だと思っていましたが、決してそんなことはありませんでしたね。
言葉の背景にある季節は、いろどりも美しく、落ち着いた穏やかな日々であったことがわかります。山々の変わりゆく紅葉に見とれ、静まり返った夜長には大きな月を仰ぐ、そんな風に人々は長月の季節を過ごしていたのではないでしょうか。
スケジュールを埋めすぎてしまう現代人は、長月の頃、少し夜長の落ち着きを味わってみてもいいのかもしれませんね。