「4月って卯月って言うんだ…ってこれってどう読むの?」と思ったことがある方はいませんか?
1年12ヶ月には、それぞれ日本古来の呼び方、和風月名(わふうげつめい)というものがあります。その4月を表す言葉が卯月になるのですが、この名前がポンと出てくる人は少ないかもしれません。
ですが、日本に古くからある言葉には、その季節にちなんだ素敵なエピソードがあるものですから、少し卯月という言葉の背景を学んでみましょう。
目次
卯月は何月?読み方は?旧暦の場合はいつからいつまで?
あまり使うことのない漢字ですが、干支の4番目うさぎ年の卯(う)です。十二支のうさぎ、方位の東、午前5~7時(卯の刻)などの意味のある漢字です。
卯月はカレンダー上の4月のことを指しています。
旧暦の卯月はいつからいつまで?
現在の日本は新暦を採用していますが、明治5年以前は旧暦に沿って生活していました。卯月という言葉は旧暦の時代にできた言葉です。
旧暦は現代とは1ヶ月ほどずれており、本来の卯月の季節は4月下旬から6月上旬だったと言われています。
和風月名は季節にちなんでつけられていますが、私達が4月で連想する桜などとは少し時期が違いそうです。では、卯月はどんな季節を指しているのか、調べてみましょう。
卯月の意味由来・語源は?諸説ある?「卯の花」の説が有力?「植月」?「初ぶ」や「産む」の派生の説も?
「卯の花」由来の説が有力か?
卯の花というのは、ウツギ(空木)という植物のことです。
ウツギは、アジサイの仲間で、5~6月に小さくて真っ白な花をたくさんつけます。卯月の季節には、ウツギにたくさん美しい花が咲くことから、卯の花が咲く月=卯月となったと言われています。
旧暦の卯月は桜の季節ではなかったようですが、ウツギの美しい花が咲いていたのですね。
ちなみに卯の花というおからのお惣菜があるのを知っていますか?あれは白いおからが、ウツギの花がまとまって咲いている風景と似ているからですよ!
「植月」・「初ぶ(うぶ)」・「産む」の説
稲を植える季節という意味で「植月」から「うづき」になったと言う説もあります。
または、農耕の始まる季節・全ての始まりの季節という意味の「初ぶ(うぶ)」や「産む」などから派生して「うづき」となったなど、卯月には他にも意味由来の説があるんですよ。
卯月の別名は?他の呼び方もある?
「夏初月(なつはづき)」
「夏初月(なつはづき)」が別名で有名どころですね。旧暦で言うと、夏は4~6月とされていますので、4月は夏の始まりの月という意味ですね。
「孟夏(もうか)」
「孟夏(もうか)」も卯月の別名で有名です。「孟」は最初という意味の漢字です。
「花残月(はなのこりづき)」
春が終わったことで、花を惜しむ「花残月(はなのこりづき)」という別の呼び方もあります。素敵ではありませんか?
「麦秋(ばくしゅう)」
「麦秋(ばくしゅう)」は、麦の収穫を卯月の時期におこなうことからできた言葉です。「秋」は収穫を意味しています。
和風月名には、農業や産業から来ている言葉も多いです。
「木の葉採月(このはどりづき)」
養蚕も盛んになり、お蚕の桑の葉を取ることから「木の葉採月(このはどりづき)」という言葉も生まれました。
気候も良くなり、人々が元気に働きだしている姿が目に浮かぶようですね。
卯月を季語に使った俳句はどんなものがある?
卯月を季語として詠んだ俳句の有名なものを以下で紹介します。卯月の俳句をみると、もう季節がどんどん夏へ向かっていることを感じますよ。
寝ころんで 酔のさめたる 卯月哉
正岡子規の句です。ふと寝転んでみると、世界は夏になっており、酔いがさめたように生き生きと動き出しているんだなあという句です。
さわやかな夏の始まりを感じますね。
仕入れたる 茄子の小さき 卯月かな
茄子の収穫が始まったけれど、真夏が旬の茄子はまだ少し小さめですと言う句です。
そんな女性らしい目線でとらえた鈴木真砂女(まさじょ)の句になります。
蚊の居ると つぶやきそめし 卯月かな
高浜虚子の句です。
だれでも初夏の季節に「もう蚊がいる!」とつぶやいたことがありますよね。そんなシーンを切り取った句になります。
まとめ
卯月という言葉からは、なんだか春先のおとなしいふわふわした季節を連想しますが、実際は夏の兆しが見え隠れする、すべての始まりのワクワクする季節であったことがうかがえます。
寒い季節が終わり、みんなが一斉に仕事に精を出し始める、そんな活気のある季節だったようです。現代に生きる私たちでも、夏の気配を感じると希望に満ちたり、なんだかエネルギーが湧いてくるように感じますよね。
昔の人々も、生活は大きく違いますが、空や自然を見て同じように感じていたのだなと思うと、なんだかうれしい気がしますね。