我々日本人にとって年末年始は特別な時期、だからこそ、その時だけの用語はさまざまあります。その中には、今も当たり前に使われるものもあれば時代に合わせて廃れていくものも。
「藪入り」という言葉もまたあまり使われていない言葉の1つ。「藪入り」とはどういった意味でどのような由来があるのでしょう。
薮入りの意味由来は?語源は?
「薮入り」は、昔、商家などに住み込み奉公していた奉公人が実家へと帰ることのできた休日の事を意味します。
そもそもはお嫁に行った女性たちが実家に帰る日を指していたのが、商家でも取り入れられたのです。
ここで対象となるのは奉公人たちです。都市部へと出てきてどこかの商家で雇われ日々働き続けた彼らが、実家へと帰省する日となったのでした。
1年間でたったの2日、大変ですよね。遠方から来たものであれば1日で行って帰ってなど到底できず、藪入りの習慣を取り入れていない商家もありましたから、何年も親兄弟と会えずにいるような方も当たり前にいたのです。
実家に帰る時は商家よりお小遣いももらえたり、久しぶりに家族たちも出会えるし「盆と正月が一緒に来たよう」といった具合に喜びが表されています。
お小遣いだけでなく着物や履物まで新しいものを用意してもらえるところもあったようです。主人が選んだそれらは「お仕着せ」と呼ばれました。今はあまり良いイメージで使われていない「お仕着せ」という言葉、会社の社長に着る服まで勝手に決められ押し付けられると考えたら現代の感覚では嬉しいとは思えません。
藪入りの語源は?
藪入りの語源は、いくつかあります。
都会と違って彼らの実家があるのは藪深い田舎、そこから藪入りとなったという説があります。
実家に帰るというのを「宿入り」とし、それがなまって藪入りとなった説もあり、さらに藪入りは1月16日と7月16日とどちらも16日です。八と二をかけると16、八が「や」で二が「ぶ」・だから藪入りなんて説もあり、言葉遊びが江戸っ子らしいですね。
薮入りはいつ?2024年は?
藪入りという言葉が当たり前に使われていた時代は旧暦で暮らしていました。その後1872年・明治5年に改暦がおこなわれ新暦となっています。
そのズレは1ヶ月ほど、季節感の違いが出てしまうので新しく日付を変えた行事もありますが、藪入りは日にちをそのまま引き継いでいるのです。 旧暦と新暦のズレをうまく利用して、雛人形を長く飾るというお宅もあるでしょう。
2024年の薮入りは?いつ?同じ?
というわけで、2024年の藪入りも1月16日(火)・7月16日(火)となります。
と言われても、その日がお休みとなるわけでもなくどちらでも関係ないといった方が大半でしょう。ただ昔は、その2日間こそが本当にありがたい日だったのです。子供たちが、ずっと楽しみにしている日でもありました。
「盆と正月が一緒に来たよう」とは?由来は藪入り?
この言葉の由来となるのが、「藪入り」なのです。
年にたったの2回の実家に帰られる時です。すでに10歳頃には一人都会に出て修行の身ですから、親と会える日は正にお盆とお正月がいっぺんに来たような楽しさだったのでしょう。
昭和頃までこの習慣は続いていたと言います。そして戦後、働き方は大きく変わり週休制も定着しました。そういった中で藪入りは消えていきました。
とはいえ、正月休みやお盆には変わらず帰省しており、習慣としては残っています。大人にとってはお年玉を上げなければならないし、帰省ラッシュに巻き込まれて何かと面倒な日とはなってしまったため素直に喜べなくなっているかもしれません。
でも子どもたちにとってはやはり久しぶりにいとこ達とも会えてご馳走も食べられて、「盆と正月が一緒に来たような日」と言われたらどれだけ楽しい日か想像がつくことでしょう。
まとめ
戦前まで商家にて修行といった習慣は続いていましたから、結構最近まで藪入りという言葉も当たり前に使われていたのです。
今は残っていませんが、小学4・5年生と考えるとその喜びは十分に実感できます。大切な行事だったのですよね。