旧暦の「芒種(ぼうしゅ)」という言葉は「春分」「秋分」などと同じ暦(こよみ)の名称ですが、日常生活ではほとんど聞かない言葉だと思います。芒種とは一体いつのことで、どんな意味をあらわす言葉なのでしょうか?暦の考え方などもあわせて、わかりやすく解説していきます!
このページの目次
芒種とはいつのこと?
2017年の芒種の日付
2017年の芒種は6月5日(月)です。
芒種は旧暦で毎年6月5日頃です。ただし、太陽の位置で毎年計算されて日時が決まるため、年によっては6日になることもあります。
2017年以降の芒種の日付
2024年までの芒種は、以下のように日付が決まっています。
西暦 | 芒種 |
---|---|
2017年 | 6月5日 |
2018年 | 6月6日 |
2019年 | 6月6日 |
2020年 | 6月5日 |
2021年 | 6月5日 |
2022年 | 6月6日 |
2023年 | 6月6日 |
2024年 | 6月5日 |
こうしてみると、気になるのが日付の微妙なズレだと思います。なぜ年によって日付がずれていってしまうのでしょうか??
日付は太陽と地球の位置で決まる
日付がずれてしまう理由は、太陽と地球の位置を固定して日時をあわせて決めているからです。
1年に1回、地球と太陽が決まった位置関係になったタイミングのことを芒種と名付けているので、「5月20日は芒種の日」というように誕生日のように日付で決めているわけではありません。
では、どのような位置関係がきまっているのでしょうか。下記の図をご覧ください。
これは太陽の周りを1年間かけて地球が1週回る様子を示している絵で、決まった角度の場所ごとに名前がついています。
芒種はいつなのかというと、春分を基準にして75度の位置にきたときの日時となります。
「でも、1年に1週ぴったりならずれないはずなんじゃ・・?!」と疑問に思うかと思いますが・・うるう年というのが4年に1回ありますよね。
1年という「時間」は、実は365日よりも6時間ほど多くあります。そのため、太陽を一周し元の位置に戻ってきたとき、カレンダーより6時間ほど遅れて戻ってきてしまうんです。これによって毎年芒種の時間や日付が変わり、うるう年で調整されてまたずれる、ということを繰り返しています。
年によって日付がずれていくのは、上記のような理由からです。
芒種の意味と暦の考え方
芒種っていつ?という疑問が解決したら、次の疑問が「春分や秋分は聞いたことがあるけれど、芒種とか聞いたことのない名前たちって一体なんなんなの?」ということかと思います。それらにもひとつひとつ意味があるのです。
芒種とは季節をあらわす旧暦の名称
芒種とは、二十四節気(にじゅうしせっき)と呼ばれる暦の季節の名称のひとつです。毎年6月5日頃のことを旧暦で芒種と呼びます。
二十四節気とは?
二十四節気とは、地球から見たときに太陽が1年かけて移動する通り道を基準として、1年を24等分し約15日ごとに区切ってつけた季節の名称を意味しています。先ほどの太陽の図をもう一度見てみましょう。
春分を起点に24等分された地球と太陽の位置関係の名前は、位置関係と同時に季節を表していたのです。これが二十四節気とよばれる旧暦の正体です。
24等分して1ヶ月の前半を【節(せつ)】、後半を【中(ちゅう)】とよび、それぞれの区切りとなる日に季節を表す名前がつけられています。上記の太陽の図を四季ごとにならべたのが下記の一覧表です。
芒種は暦のうえでは「夏」にあたる季節の名称で、芒種の前は「小満(しょうまん)」、小満があけて芒種をすぎると6月21日頃からは「夏至(げし)」の季節がはじまります。芒種は、1年でもっとも昼間が長い夏至の一つ前の季節というわけです。
芒種の季節と由来
芒種(ぼうしゅ)とは、稲や麦などの「芒(のぎ)」のある穀物を植え付けることが由来となって生まれた季節の名称です。芒とは稲や麦などの実の殻にある毛のことで、芒の付いた実は「もみ」のこと。麦を収穫し、畑に穀物を植え付ける時期を意味しているのです。
この時期は梅雨入り前で、雨が降ることが多くなります。そして、農家では種まき・田植えの開始期にはいり、準備などで多忙を極める時期です。
暦便覧原文
江戸時代にこよみを記した書物【暦便覧(れきびんらん)】によると、芒種は
「芒(のぎ)ある穀類、稼種(かしゅ)する時なり」
と記されており、穀物を植え付ける季節であると説明しています。
五月雨・五月晴れ
五月雨(さみだれ)とは、梅雨入りの前から梅雨に降る長い雨のことで、芒種の時期の降り続く雨のことを指します。
五月晴れ(さつきばれ)とは、 旧暦で6月の芒種の時期に、曇天の中少しみえた青空のことを意味していました。しかし、明治3年の改暦で新暦が5月となり、小満の良い気候が続く季節をあらわすようになったため、「五月晴れ」は雲ひとつ無い晴天を意味するようになりました。
「芒種の候」はいつからいつまで?
芒種は2017年の場合、6月5日から6月20日まで(夏至の前日まで)をを意味しています。お手紙の時候の挨拶で「芒種の候」を使えるのは、その期間中です。
芒種の七十二候
七十二候(しちじゅうにこう)とは、二十四節気をさらに3つに分けた期間のことです。
15日を5日ずつの期間に分けて、それぞれ「初候(しょこう)・次候(じこう)・末候(まっこう)」と呼びます。
古代中国発祥の季節を表す方式のひとつで、各七十二候の名称は、気候の動きや動植物の変化をさらに具体的に知らせるような短文になっています。
芒種の七十二候は以下のようになっています。
初候 | 螳螂生(かまきりしょうず) | 螳螂が生まれ出る |
---|---|---|
次候 | 腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる) | 腐った草が蒸れ蛍になる |
末候 | 梅子黄(うめのみきばむ) | 梅の実が黄ばんで熟す |
カマキリや蛍が現れ始めたり、梅の実が黄ばみ始めたり、蒸し暑くなってきている様子が表現されています。今はなかなかお目にかかれないような情景の描写ですが、じめじめしている様子が伝わってきますね。
まとめ
芒種について、理解できたでしょうか。理解するのにここまで様々な周辺知識が必要な言葉も、日本の歴史ならではですね。旧暦と新暦は本当にややこしいですよね。
日常生活で使うことはまずないですし覚えていなくも困る場面は滅多にないとは思いますが、芒種の時期になったら少しだけ、昔の人が感じていた感覚を、自分も探してみるのも悪くないかもしれません。