旧暦の「啓蟄(けいちつ)」という言葉の意味を知っていますか?啓蟄は「けいちつ」と読み、「秋分」「冬至」などと同じ暦(こよみ)の名称です。「けいちつ」という読み方は、日常生活ではほとんど聞かない馴染みのない言葉だと思います。
では、啓蟄とは正確にはいつのことで、どんな意味をあらわす言葉なのでしょうか。啓蟄の意味・期間・暦の考え方などもあわせて、わかりやすく解説していきたいと思います。
このページの目次
啓蟄とはいつ?
2017年の啓蟄の日
2017年の啓蟄は、3月5日(日曜日)です。
啓蟄とは、旧暦で毎年3月5日頃のことです。ただし、太陽の位置で毎年計算されて日時が決まるため、年によっては6日になることもあります。
2017年以降の啓蟄の日
2024年までの啓蟄の日は、以下のように日付が決まっています。
西暦 | 啓蟄 |
---|---|
2017年 | 3月5日 |
2018年 | 3月6日 |
2019年 | 3月6日 |
2020年 | 3月5日 |
2021年 | 3月5日 |
2022年 | 3月5日 |
2023年 | 3月6日 |
2024年 | 3月5日 |
年によって、3月5日と6日があるんですね。
では、なぜ年によって日付が変わることがあるのでしょうか。
日付は太陽と地球の位置で決まる
日付がずれてしまう理由は、太陽と地球の位置を固定して日時をあわせて決めているからです。
1年に1回、地球と太陽が決まった位置関係になったタイミングのことを啓蟄と名付けているので、「3月5日は啓蟄の日」というように、日付で決めているわけではありません。
では、どのような位置関係がきまっているのでしょうか。下記の図をご覧ください。
これは太陽の周りを1年間かけて地球が1周回る様子を示しているいる図です。決まった角度の場所ごとに名前がついています。
啓蟄の位置は、春分を基準にして345度の位置となります。
「でも、1周まわって戻って来る時間は1年なんだから、同じことじゃないの?日付がずれる理由になってない・・」
と思うかもしれませんが、「うるう年」を思い出してみましょう。
1年という「時間」は、実は365日よりも6時間ほど多くあります。そのため、太陽を一周し元の位置に戻ってきたとき、カレンダーより6時間ほど遅れて戻ってきてしまうんです。これにより、毎年天文学的な啓蟄の時間は毎年ずれていき、それが数年分積み重なって日付もかわります。そして、4年に一度のうるう年で調整されてまた戻る、ということを繰り返しています。
年によって日付が違うことがあるのは、上記のような理由です。そのため、2024年以降も啓蟄の日は2月18日と19日をいったりきたりを繰り返していきます。
啓蟄の意味と暦の考え方
啓蟄の日がどうやって決まるか、ということはなんとなく理解できたでしょうか。でも、「啓蟄の言葉自体の意味ってなんなんだろう?」という疑問が残りますよね。「あまみず」じゃないならその意味はなんなのか、どんな意味なのかを詳しくみてみましょう。
啓蟄とは旧暦の名称
啓蟄とは、二十四節気(にじゅうしせっき)と呼ばれる暦の季節の名称のひとつです。
毎年3月5日頃の旧暦を啓蟄と呼んでおり、季節は旧暦の春に該当します。
二十四節気とは?
二十四節気とは、地球から見たときに太陽が1年かけて1周する円を基準として、1年を24等分し約15日ごとに区切ってつけた季節の名称を意味しています。
先ほどの太陽の図をもう一度見てみましょう。
春分を起点に24等分された地球と太陽の位置関係の名前は、位置関係と同時に季節を表していたのです。これが二十四節気とよばれる旧暦の正体です。
24等分して前半を【節(せつ)】、後半を【中(ちゅう)】とよび、それぞれの期間の区切りとなる日に名称ついています。
下記の表は、二十四節気を四季ごとにならべたのものです。啓蟄は、赤枠の部分となります。
啓蟄の期間
2017年の啓蟄の期間は3月5日から春分(しゅんぶん)の前日の3月19日までの15日間になります。
二十四節気の名称は、特定の一日だけでなく【期間】としての意味もあります。
啓蟄の前は「雨水(うすい)」、雨水があけて啓蟄をすぎると、3月20日からは「春分(しゅんぶん)」の季節がはじまります。
啓蟄の意味・季節・由来
啓蟄とは「冬籠りの虫が這い出る」という意味です。
「土中で冬ごもりしている虫」をあらわしており、冬眠していた虫が冬眠からさめ、穴から出てくる頃という意味です。
まだまだ寒い季節ですが、日差しも徐々に暖かく春らしくなってきます。
暦便覧原文
啓蟄は、江戸時代にこよみを記した書物【暦便覧(れきびんらん)】に
「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也」
と記され、地中に縮まっていた虫が穴から出てくる頃、と説明がされています。
「啓蟄の候」はいつからいつまで?
「啓蟄の候」を使える期間は、啓蟄の期間中(2017年の場合3月5日から3月19日まで)です。
啓蟄の候(読み方:けいちつのこう)とは、冬のはじまりに使われる時候の挨拶です。「虫も顔をだす春の陽気となってきましたが」という意味で、手紙などの冒頭に使われます。
啓蟄の七十二候
実は、二十四節気をさらに細かい期間に分けた呼び方もあるんです。日本の旧暦の攻略は一筋縄ではいきませんね。。この際なので、とことん見ていきましょう。
七十二候とは?
七十二候(しちじゅうにこう)とは、二十四節気をさらに3つに分けた期間のことです。古代中国で考案され日本に伝わったもので、二十四節気よりさらにこまかく季節を表している名称です。
15日を5日間ずつの期間に分けて、それぞれ「初候(しょこう)・次候(じこう)・末候(まっこう)」と呼びます。
各七十二候の名称は、気候の動きや動植物の変化を具体的に知らせるような短文になっています。日本に伝わってからは、日本の季節に合うように変更も加えられており、それぞれ下記のような名称がつけられています。
啓蟄の七十二候の名称と意味
啓蟄の15日間のうち5日間ずつ、それぞれの期間に名前と意味がついています。
候 | 名称 | 意味 |
---|---|---|
初候 | 蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく) | 冬蘢りの虫が出て来る |
次候 | 桃始笑(ももはじめてさく) | 桃の花が咲き始める |
末候 | 菜虫化蝶(なむしちょうとなる) | 青虫が羽化して紋白蝶になる |
動植物が春にむけて動き出している様子が描かれています。春はもうすぐそこなんですね。
まとめ
啓蟄について、読み方・意味・期間などは理解できたでしょうか。背景には二十四節気・七十二候という旧暦の考え方があったんですね。日本の文化は本当にどこまでも奥深いです。
読み方も難しいですが、春分の日の直前が啓蟄であると覚えておきましょう。