旧暦の「穀雨(こくう)」という言葉は「立春」「春分」「夏至」などと同じ暦(こよみ)の名称なのですが、「穀雨」は日常生活ではほとんど聞かない馴染みの少ない言葉だと思います。穀雨とは一体いつのことで、どんな意味をあらわす言葉なのでしょうか?暦の考え方などもあわせて、わかりやすく解説していきます!
穀雨の意味
穀雨とは?
穀雨(こくう)は、二十四節気(にじゅうしせっき)と呼ばれる旧暦の名称の一つで、毎年4月20日頃のことを意味しています。旧暦の順番で、「晴明(せいめい)」から15日目にあたります。
穀雨とは全ての穀物を潤してくれる春の雨という意味で、さかんに降る雨が田畑を潤し、穀物などが育つのを助ける季節のことを意味しています。農家にとっては種蒔きの季節であり、生き生きした新しい力がみなぎる雰囲気の情景です。
この頃から、変わりやすい春の天気も安定し、日差しも強まって来ます。
天文学的には、太陽が黄経30度の点を通過するときのことをいいます。
暦便覧
江戸時代にこよみを記した書物【暦便覧】によると、穀雨は
「春雨降りて百穀(ひゃっこく)を生化(しょうか)すれば也」
と記されており、「五穀を潤す雨が降る季節」と説明されています。
2017年の穀雨はいつ?
2017年の穀雨は4月20日です。
穀雨は毎年4月20日頃ですが、二十四節気は太陽の位置で正確に計算されるため、その年によっては21日になることもあります。
二十四節気とは?
では、穀雨意外の二十四節気の時期と名称を順番にみてみましょう。
二十四節気とは、地球から見たときに太陽が1年かけて移動する通り道を基準として、1年を24等分し約15日ごとに区切ってつけた季節の名称を意味しています。
1年全体を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つの期間に分けて、1ヶ月の前半を【節(せつ)】、後半を【中(ちゅう)】とよび、それぞれの区切りとなる日に季節を表すのにふさわしい名称がつけられています。
穀雨の七十二候
七十二候(しちじゅうにこう)とは、二十四節気をさらに5日ずつ初候(しょこう)・次候(じこう)・末候(まっこう)の3つに分けた期間のことです。古代中国発祥の季節を表す方式のひとつで、各七十二候の名称は、気候の動きや動植物の変化を知らせる短文になっています。
穀雨の季節の七十二候は以下の通りです。
初候 | 葭始生(あしはじめてしょうず) | 葦が芽を吹き始める |
次候 | 霜止出苗(しもやんでなえいづる) | 霜が終り稲の苗が生長する |
末候 | 牡丹華(ぼたんはなさく) | 牡丹の花が咲く |
植物が成長したり、花が咲いたりする芽吹きの季節の様子をよくあらわしていますね。
穀雨に関する習慣・行事・季節のもの等
穀雨に関連する風習や季節のイベントは以下のようなものがあります。
百穀春雨(ひゃくこくはるさめ)
この時期に降る雨は百穀春雨と呼ばれ、百穀を潤し芽を出させる春雨という意味があります。穀雨は種まきなどを始めるのに適した時期であり、農作業をするうえでの大事な目安にされているため、この時期の雨は恵みの雨として大切に考えられていました。
八十八夜(はちじゅうはちや)
穀雨の時期の終わり頃に八十八夜(はちじゅうはちや)があります。八十八夜は、立春を第1日目として88日目(立春の87日後の日)にあたる日のことで、種まきの目安であり重要な日とされていました。穀雨の時期はその意味の通り、本格的に田畑の準備が始まっていきます。
穀雨の地球と太陽の位置
太陽黄道(こうどう)とは
黄道とは、地球から見たときに1年かけて太陽が移動する天球(※)上の見かけ上の通り道のことを意味しています。地球を中心に考えた時、1年かけて太陽が地球のまわりをぐるりと一周するときの円を想像してみるとわかりやすいでしょう。黄道は、地球が太陽の周りを一周する公転の描く円と全く同じです。
黄道を360度に分けたものを黄径(こうけい)といい、二十四節気の地球と太陽の位置関係は上記の図のように分けることができます。春分を黄径0度として、15度おきに24の節気が定められています。
0度である春分点を出てから再び春分点に戻るまでの地球からみた太陽の位置と覚えておくとわかりやすいでしょう。
用語解説
※天球(てんきゅう):観測者を中心として、半径が無限に存在する仮想球体のこと。地球から見た空(宇宙)全体のことを意味します。